人が嫌い?そんなアナタのための仕事

外向的な人たちの世界で成功するための戦略を考える 

ニック・クレイトン
2016年9月20日  

ビル・ゲイツ(左)とスティーブ・バルマー(右)

  


  

明け方、ジョシュ・マンハイマー氏は仕事場でじっと考え込んでいます。玄関を開けたらすぐ封を破り開けたくなるような完璧な文章を考えているのです。 

  

「内向的な人は目標に向かって進むので、他人からの称賛をあまり必要とせず、細部に気を配り、入念な意思決定をします 。」

  

アメリカ、バーモント州の人里離れたファームハウスで、マンハイマー氏は恥じらいもなく“ジャンクメール”を書いていると話します。そんな同氏は、実は世界でも有数の人物なのです。“direct mail copywriter(ダイレクトメールコピーライター)”と検索してみてください。同氏の名前がトップに出てきます。

  

この仕事は内向的な人にとってピッタリの仕事だと、マンハイマー氏は言います。と言っても、私たちは実際に話したわけではなく、メールで会話をしただけです。同氏は決して自分のクライアントに会いません。犬の散歩や馬のエサやりをしているほうが好きなのだそうです。

  

「人は好きです。でも私は駆け引きのある集団の中ではあまり力を発揮できません。鹿の赤ちゃんのように迷子で無力になります。」

   

内向的な人のほとんどは細部に気を配ることができ、入念な意思決定をする(写真: Alamy)

   

  
同氏の葛藤は内向的な人には一般的で、可能性として人口の半分ほどがこれに当たると言えます。彼らはシャイなのではなく、より刺激が少なく静かで思考を促す環境を好んでいるのです。

  

だからと言って、内向的な人が仕事で大きな成功を得られないわけではありません。

  

皆に共通する重要なポイントは、職業指導者によるパーソナリティー・スケール(人格尺度)の計測を行った上で、自分が位置する所に適した仕事を見つけることです。 

  

私達のほとんどは、多かれ少なかれ内向的な一面を持っています。どんな社会的状況でも社交的でいられるわけではなく、「たまには他人に邪魔されずにじっくり考えたい」「個人的な感情を全員には見せたくない」「少しでいいから一人になりたい」と思ったりします。

  

でも例えば、内向的な人は、目標に向かって進むために他人からの称賛をあまり必要とせず、細部に気を配ることができ、入念な意思決定をします。これは仕事のどの領域においても有益な特徴です。

  

  

問題の核心

  

信じ難いかもしれませんが、全くの偶然によって天職に巡り合う人もいます。マイケル・モティリンスキー氏はカリフォルニア州で弁護士をしていましたが、次第に仕事が嫌いになり始めました。

  

「常にミーティングに出て、他人とのコンスタントなやり取りをしなければなりませんでした。」

  

マイケル・モティリンスキー氏は弁護士開業のため米バージン諸島へ移住、現在は年間約250件の結婚式で司式者をしている。 (写真: Mary Latham Photography)

  

モティリンスキー氏は、兄弟に自分たちの結婚式で司式をしてほしいと頼まれた事をきっかけにキャリアチェンジをしました。同氏は牧師になるため、それほど複雑ではないオンラインコースを受けました。その後、弁護士開業のため米バージン諸島へと移りました。

  

「司式者を知らないかと尋ねられることが何度かあり、私は牧師の資格を持っていると答えました。するとそれが勝手に広まって、ウェディングプランナーやクルーズ船やリゾートから電話が来るようになりました。」

  

同氏は、人前に立つ業務を含むにも関わらず、現在年間約250件の結婚式で司式者をしています。これは内向的な人にとって理想的だと、同氏は言います。

  

「結婚式当日は、みんな大抵忙しくて緊張しているので、私には気づきもしません。私はただ祭壇やガゼボに立って、式が始まったらセリフを読み、式が終われば背景に溶け込んで、そのうち誰にも気づかれることなく裏口からこっそり抜け出せばいいのです。」 

  

もちろん、仕事だけが人生ではないことは モティリンスキー氏の海沿いの家を見ればお分かりでしょう。同氏は“島の娘”と結婚し、2人の子供たちと一緒に3人目の到着を待っているのだそうです。

  

  

もう一人の自分

  

自分を内向的だと言う人でも、キャリア組みを全面的に変えることは可能です。ダン・ナイナン氏は、現在では何千人もの前でジョークを言いうことで生計を立てていますが、初めはシリコンバレーでエンジニアをしていました。

 前職の任務の一環に、会議でのインテル製品の実演がありました。世界を飛び回るのは好きでしたが、ステージ上で話す事にただならぬ恐怖を感じるようになったそうです。 

  

「ある意味、クラーク・ケントとスーパーマンの二分法のようなものです」 

  

ナイナン氏は、公衆の面前で話す事への恐怖心を乗り越えるため、極端な方法を試すことにしました。著者ジュディ・カーターの『コメディー・バイブル』の短期コースを受講することにしたのです。コースの最後は“実際のコメディークラブで実演”して修了でした。

  

「実によく出来ました」とナイアン氏は振り返ります。「同僚に録画を見せたら、ラスベガスの会議で2,500人に向けて話してほしいと言われました。」

  

  

販売会議で2,500人を前に話すナイアン氏のわずか3度目の漫談(写真: Dan Nainan)

    

ナイアン氏は、企業の販売会議で2,500人を前にして公演することになりました。

  

「アンディ・ゴーヴ氏(インテル創始者でCEO)のモノマネを、月曜の朝8時にやりました。誰も酔っ払っていない時間帯にです。みんな喜んでくれましたよ。私にとって、わずか3度目のショーでした。」

  

ナイアン氏は現在、ニューヨークを拠点にコメディアンとして活動し順調に生計を立てています。

エンジニアからコメディアンへの転身で2つの人格を手に入れた、と言います。

  

「ある意味、クラーク・ケントとスーパーマンの二分法のようなものです。ショーの後に私と出かける人は、なんとなくガッカリしているように見えるんです。私の口から出る言葉が爆笑ものじゃないから。私は“現実”では、おとなしくてシャイだからきっと皆それに驚くんでしょう。」

  

同氏は孤独ではありません。行動を起こしたり話し方講座を受講するなどの「暴露療法」は、職場での社会的不安や内気さを克服する方法としてしばしば推奨されています。

ですが、「こうした事と内向性を混同してはならない」とグレゴリー・ポントレッリ氏(ローザンヌ・ビジネス・ソリューションズ社タレント・マネジメント・コンサルタントのCEO)は言います。

  

「人は外向的になれますが、内気さや社会的不安に苦しむこともあります。」 

   

グレゴリー・ポントレッリ氏「人は外向的になれるが、内気さや社会的不安に苦しむこともある」(写真: Alamy)

  
また、ポントレッリ氏は内向的な人のための理想的なキャリアの在り方に挑戦しています。販売などの一般的には外向的と思える職業でさえ、あらゆるスキルが求められるのです。

  

「精神測定テストで候補者を選抜・除外するというミスを犯す企業があります。仕事には、内向性・外向性を含めて人格の多様性が喜んで受け入れられるべきです。なぜなら、その多様性は大抵、より良い意思決定や解決策、クライアント理解に繋がる多面的な視野を与えてくれるからです。」 

  

 

  

陰陽関係

 

この人格の多様性は、世界有数企業の設立においても見受けられます。例えば、内向的で有名なApple社の共同設立者スティーブ・ウォズニアック氏は、割と外向的なスティーブ・ジョブス氏とペアを組みました。Microsoft社ではビル・ゲイツ氏はポール・アレン氏と、そしてその後、更に威勢の良いスティーブ・バルマー氏と組みました。Facebook社だとマーク・ザッカーバーグ氏とシェリル・サンドバーグ氏のコンビがいます。

  

1998年、ビル・ゲイツ氏とスティーブ・バルマー氏(写真:Getty Images)

  

この陰陽関係は、(不動産PR会社の)デイドラ・ウラード氏が追及する戦略でもあります。同氏は自分と正反対の性質を持つオーディ・チェンバレン氏をビジネスパートナーにしました。彼らの陰陽関係は、カリフォルニア拠点の不動産PR企業 Lion and Orb.社の名前にもなっています。 

「私は外向的な人を積極的に受け入れて活かします。内向的な人が皆そうするかは分かりませんが。私にとって外向的な人は、守ってくれる人間盾なんです。」

「彼らのおかげでクタクタになる事もありますが、私は外向的な人たちとパーティーや情報交換のイベントに出掛けるのが好きです。お先に失礼するのが私という場合が多いだけです。」

  

 これは同企業にとって、会社をうまく回す原動力なのです。

  

「彼は事業開発を担当し、会議に行ったり電話をかけたりして人に売り込むのが好きで、私はミーティングノートを書き戦略的な計画を練るんです。私の売り込みはEメールが圧倒的に多いですが、彼は電話派ですね。」 

  

  

コメディアンのナイアン氏は、個人的な付き合いのほうが厄介だと感じています。「2千人の前で話すより、女性に話しかけるほうが恐ろしいです。」

  

  

マンハイマー氏はクライアントに会うより馬のエサやりを好む。(写真:Josh Manheimer)

  

内向的な人の中には、最終的に仕事のスキルを個人的な付き合いに移行させられる人もいます。ライターのマンハイマー氏は、妻のレニーさんとオンラインで出会いました。彼女はファッションモデルでペルーに住んでおり、英語は全く話せず、同氏もスペイン語は皆無でした。しかし同氏のメール力は絶大で、ソフトウェア翻訳を使ったとは言え、なんと8日後には、彼女を暖かく日の降り注ぐリマから同氏の住む人里離れた農家に移り住むよう説得してしまったのです。 

「彼女はバーモント州がどこにあるかも、ましてや冬用のコートが要る事も知りませんでした」と同氏は言います。「5カ月後に秘密の滝の下で結婚しました。」

  

  

元記事 BBC(英語)
http://www.bbc.com/capital/story/20160919-hate-people-here-are-the-jobs-for-you