ロバート・グラスパー「モス、もう誰も音楽を買う時代じゃないんだ。」新作アルバム『Fuck Yo Feelings』インタビュー(2/2)

前回の続き。NYブルーノートにてVIBEがロバート・グラスパーにインタビュー。

  

2019年10月9日 
By William E. Ketchum III

  

 

VIBE:今回のアルバムには、デンゼル・カレー、YBNコーデー、バディといった若いラッパーも多く起用しているけど、それは意図的?

  

グラスパー:ああ、若者の風も入れたかったから。だからって俺自身は若くなっちゃいない。このアルバムは世代を超えて皆が愛せるものにしたかったんだ。若者を入れたのも、彼らを彼らにとって普通じゃない環境に入れることが大事だと思ったからだ。YBNコーデーがハービー・ハンコックと同じ曲に入るなんて普通じゃ起こらないけど、コーデーはかなりドープだったよ。彼はオールドソウルを持ってるし、俺より前の世代の人物を尊敬してる、それでいて作り出すものは新しい。テラス・マーティンが彼を紹介してくれたんだ、彼も同じ心を持ってる。俺が人から勧められるラッパーはいつもメインストリームや商業主義から外れたラッパーだ。それに、そうあるべきだとも思ってる。俺はいつだってそこに身を置いてるから。他のものも好きだけどな。

  

  

ヤシーン・ベイ(2011年にモス・デフから改名)

 

VIBE:ヤシーン・ベイ(akaモス・デフ)との関係について教えて。彼は最初の『Black Radio』にも参加していたし、その前もコラボしていたよね?

  

グラスパー:ライブでしょっちゅうな。ヤシーンは基本的に常に俺のバンドをライブに使ってたんだ。俺はヤシーンの音楽監督で、2006年くらいからそうなった。彼が生バンドでやる時はいつも俺のバンドでやってたよ。最初は、何か事情があってピアノ担当がライブに間に合わなかったときに俺が代打になって…(笑)サポートでピアノを弾いたら連中はそのまま俺を外せなくなったのさ。

  

  

VIBE:そのピアノ担当はクビ?

  

それで終わりだったな。だから俺は彼のバンドに自分のメンバーを起用した。俺は「お前のやろうとしてることは見えた。それにはクリス・デイヴとデリック・ホッジが必要だ」と言ったよ。ヤシーンとはそれ以前も知り合いだった。彼はいつもビラルとつるんでたし、ビラルの最初のアルバムにも参加してたから。俺は2007年まで彼の音楽監督もやってた。んで俺が自分の制作を始めて、それ以来一緒にやってるよ。ステージ上での俺たちの繋がりは深い。ヤシーンは1つの楽器みたいな存在だ。ほとんどのラッパーがラップできないような音を俺たちが演奏しても、彼はいつも自然とラップを乗せられる。普通の4拍で数えられるビートじゃなくてもだ。「イイねぇ、32種類の変化があんのか。これに乗せてラップし倒したいぜ」ってね。普通じゃない変拍子の曲でも自然にラップできる。彼はステージ上でどこまでも行けるんだ、だから俺たちのショーに同じ演奏はない。そういう事が俺を自由にしてくれるし、“ヤシーンのためにこう演奏しなきゃ”と心配する必要もない。

  

  

VIBE:ヤシーン・ベイは、特にここ5、6年はいろんな意味で “世捨て人”みたいだ。でも彼は君の新しいプロジェクトにも加わってる。今回も1日2公演を4日連続で出演するし、最近では君と一緒にケネディ・センターでの公演も終えたね。彼についてどう理解している?

  

グラスパー:俺にはヤシーンホットラインがあるからな!(笑)冗談だけど、俺たちはお互いに尊敬しあってる。彼が俺にこう言うんだ。「俺には分かるよ、これがバンド形式って意味では音楽の最高水準だって。普通とは違うかもしれないが最高になること間違いなしだ。」ヤシーンはジャズやヒップホップや他のスタイルの音楽への愛が深いし、俺たちならどこまでも行けると知ってる。一緒にポップをやったこともあるよ。シンディ・ローパーやニール・ヤング、レディオヘッド。ヤシーンは歌うのも好きだから一緒に色々やる。彼は俺のやることや俺が一緒にやるミュージシャンのことを尊敬してる。“ライブ”と“俺はこれがやりたい”ってのは違うし、それが彼を音楽的に成長させてもいる。前にやったから今回はパスするっていうただのライブもあるが、俺たちは同じ曲をやっても昨晩と全く違ったものになる。ヤシーンはそれを糧にしてるんだと思う。

 

でもアイツは間違いなく世捨て人だ、ライブに現れないこともある。(笑)

 

だけど俺の約束をすっぽかしたことは一度もないよ。「モス(ヤシーン)はどこだ?」ってことも他の人ならあり得るけど、俺にしたことは一度もない。彼が飛行機を逃したと言えば、何か方法を考えるさ。これはリスペクトの話だ。

  

  

ヤシーン・ベイ(写真:Dennis Manuel)

  

VIBE:彼とEPやアルバムを作る可能性は?

  

グラスパー:それについては長年話してるし可能性はめちゃくちゃ高い。というか確実だ。彼もこの話をする度にやりたいと言ってるよ。今回の公演も毎晩録音されてるから、もしかしたらこのライブから(レコードが)出来るかもしれないし。

  

ヤシーンはここ数年で何枚かアルバムを出すことになってて、マニー・フレッシュとのアルバムや、ソロアルバム『Negus In Natural Person』を出した。2016年にはフェラーリ・シェパードとアルバム『December 99th』を音楽配信サービスTIDAL(タイダル)でリリースしてたが、あれは俺の好みじゃなかった。

 

ここ最近のアルバムに関しては本人に毎日意見を言ってる(笑)「そんなくだらねぇモンほっとけ、何やってんだよ?」仲間だからそうやって言えるんだ。「何やってんだよ?コレが何か分かるだろ、コレがマジックってもんだ。そっちのはマジックじゃねぇ!」って。そしたらヤシーンが俺を見てこう言うんだ。(上唇をゆがめて声を低くしヤシーン・ベイを真似て)「いや、お前の言う通りだな。」

 

   

VIBE:ヤシーン・ベイ(モス・デフ)の2ndアルバム『The Ecstatic』はもう配信サービスには載ってないね。

  

グラスパー:ストリーミングを良いと思ってないのさ。昨日の夜、ヤシーンとその話をしたけど、彼はそうやって今の時代について行くことを重要視してない。

 

「Wifiがあるからって俺の曲をタダでくれてやれって?どれだけ苦労して作ったか知ってんだろ」ってな。携帯すら持ってない男だから、新しい波を理解させるのは簡単じゃない。

 

【補足:ベイは今回のライブの冒頭で観客に対し、自分のパフォーマンス中に携帯を使わないよう呼びかけ、それが守られるならライブを“実施”すると約束した。】

 

彼はそういう類は全部反対なんだ。徐々に理解してもらうしかないな。今回のアルバムの『Treat』っていう曲をアップしたら、「YouTubeで見たぞ。俺たちの曲をタダで流してんのかよ?!」って言われた。

 

モス、もう誰も音楽を買う時代じゃないんだ。今の時代はできるだけ人気を集める努力をしてライブで金を稼ぐんだよ。音楽だけで金を作れる奴はもういない。

 

といってもテイラー・スウィフトみたいなタイプは別だが。彼女はある時期、Spotify(スポティファイ)に「ナメてんのか」って態度で曲を載せてなかった。でも彼女には何百万人ものファンがいて、曲を出せば金を払う人が大勢いるんだ。俺たちのファンは~、そうでもないな。(笑)

  

  

VIBE:君は数年前、テラス・マーティンとジェームス・ファウントロイと一緒にグループを結成しようとしてると言っていたけど、その話は?

 

グラスパー:1、2曲くらい遊びでやったな。そうやって他の仲間とグループを組んだことも何度かあるよ。でも一つのプロジェクトをグループでやるには時間がかかるんだ。今月はこの曲をやって、3カ月後に次の曲ってやってると、アルバムが出来上がるのは2年後なんてこともある。でも俺たちは今だってそれを望んでる。オーガスト・グリーンのコモン(やカリーム・リギンズ)の時は、制作を完了するのもツアーを回るのも大変だった。それぞれが忙しいから、お互いのわずかな空き時間を狙ってライブをやったんだ。ラシッド(コモン)は映画をやってたしな。

  

  

  

VIBE:ハービー・ハンコックから学んだことは?逆に、君からハービーにこれまでにない何かを与えられたと思う?

  

グラスパー:ハービーから学んだことは2つ。自分はミュージシャンである前に人間だということ。人生において何をしようが、自分が人間であるということを忘れちゃいけない。自分のやる事はその次にくるものだ。だからその行為ができなくなってしまう可能性は常にあるし、そうなれば残るのは自分の中身なんだよ。

  

俺はハービーの家で一緒にお経を唱えてた、ハービーは仏教徒だからな。その中でそういう内容のことを彼が話したんだ。音楽はそれを唱える人と繋がっていて、その音楽と人と魂はすべて結びついてる。もし君が善良な人間なら、その音楽を通してそれが現れる。自分がまず人間であることを忘れないように、ミュージシャンであるってのはその次の話だ。それがハービーの在り方であり、彼の放つオーラなのさ。

  

ハービーから学んだ2つ目のことは、人は誰からでも学ぶことができるということ。自分をどんなに崇高で素晴らしい人間だと思ってても、若い人から学ぶ事はある。ハービーはそれをマイルス(デイヴィス)から直接見せられたんだ。

 

マイルスはハービーが19歳くらいの時に自分のバンドにハービーを入れた。マイルスは若い衆を信頼してた。若者が何かを言いたがってるのをちゃんと見てたんだ。マイルスのバンドは全部若者で構成されてたよ。彼は自分が加わるべき状況を見極めることに長けていて、若者が今にも何かせんばかりの勢いを持っていることを察知したんだ。だからハービーも俺たちとつるむのさ。俺たちがいる場所にはハービーもやって来る。いつでも耳をオープンにしておく(よく聞く)こと、それが彼から学んだ2つ目のことだね。君が何かの達人だとしても、達人だって学ぶ事はあるんだ。

 

おわり 

 

 同インタビューPart 1↓

 

元記事 VIBE(英語)
https://www.vibe.com/2019/10/robert-glasper-interview