Tiny Desk(タイニーデスク)のエンジニアがお勧めするマイク16選!用途・楽器別、マイキング方法

マイクについて:Tiny Deskレコーディング担当ジョシュ・ロゴシンが解説

2019年4月2日
By ジョシュ・ロゴシン

  

(写真)Amr Alfiky/NPR

  

<目次>
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ステレオマイク1本で録音する

・Tiny Deskのステレオ録音テクニック

ダイナミック・ボーカルマイク

・金管楽器/キックドラム/タム/ボーカル用のラージダイアフラム・ダイナミックマイク

ストリングス/パーカッション/ピアノ/客席用のスモールダイアフラム・コンデンサーマイク

・ストリングス/金管楽器など用のスモールダイアフラム・ミニチュア・コンデンサーマイク

・ボーカル/チェロ/ピアノ/アコースティックベース用のラージダイアフラム・コンデンサーマイク

金管楽器/ピアノ/ボーカル/ドラム頭上設置用のリボンマイク

 


 

多種多様な楽器に合わせたマイク選びは、もはや芸術と言えます。

  

価格も様々ですし正解などありません。トレブル、バス、中音域のEQ調整で高価なマイクの音が良くなったり、マイクの配置によっても音は劇的に変化します。僕が楽器の録音方法に迷った時は、自分の頭を(物理的に)動かし、ココだと思った頭の位置にマイクを置き替えます(企業秘密!)。

 

皆さんがレコーディングする部屋で音はどう聞こえていますか?

 

反響やリバーブが強いと音のクリアさに影響するかもしれませんよね。電灯や冷蔵庫の音がうるさい場合はコンセントを抜いたり、屋外ならウィンドジャマー(風防)が必要かもしれません。

 


 

ステレオマイク1本で録音する

  

携帯電話に搭載されたモノラルマイクの音を劇的に向上させる簡単な方法をお探しなら、Shure(シュア)MV88+ビデオキットがオススメです。

携帯用マウントとイタリアの三脚メーカーManfrottoのミニ三脚が付属しています。僕はこのキットを使ってウミガメの赤ちゃんの放流を撮影したんですが、あらゆるソースを録音・録画できるその性能に感動しました。

また、付属の1/8インチのヘッドフォンジャックを使って録音中の音をモニタリングする事もできました。録音している音をリアルタイムで聞けるのは音量やマイク配置を調整する必要があるので必須事項です。ShureのMotivアプリを使えばステレオ幅やEQをコントロールすることもできます。マイクのみの販売もあり、お持ちのiOSデバイスのライトニングポートに直で接続するようになっています。こちらはアンドロイドでは使えません。

今年のSXSW(米国の大規模イベント) では、All Songs Considered(オンラインのマルチメディアプログラム)の『Late Night Dispatches』で同マイクが使われていました。

  

Sennheiser(ゼンハイザー)MKH 418-S

 

Tiny Deskの象徴(!?)になったSennheiser MKH 418-S(写真)Amr Alfiky/NPR

  

もっと高価なマイクだと Sennheiser(ゼンハイザー)MKH 418-Sがあります。Tiny Deskの初期の頃はこのマイクで録音していました。僕の同僚でメンターのケヴィン・ウェイトのチョイスでした。マイクが1本しかないなら、僕なら戦略的にミュージシャン全員をこのマイクの周りに配置して録音します。このマイクは映画用の声を録音するために設計されています。(よく見るブームポール先端に付けられたSennheiser416モノラル版同様。)

 

配置が正しければ驚くほどのクリアさと明るさを発揮します。

 

ボーカルにすごく近づけたり観客側に突き出して置く必要はないので、演奏者全員の顔が見えてお客さんとの親密性が損なわれないのもTiny Deskの持ち味となっています。

 

(注:418-Sはマイクがニコイチです。1つは正面向きカーディオイド“mid(M)”コンデンサーカプセル、もう1つは両方の“side(S)”にフォーカスした双指向性カプセル。後から処理する必要があるタイプのMSステレオマイクなので、レコーディング後でもイメージするステレオ幅のコントロールが可能です。)

 

 

ステレオ録音はリスナーに各音の場所を感じされてくれます。特にヘッドフォン使用時は更に鮮明なサウンドステージ(音場)が生まれます。マイクには様々な種類があってそれぞれが独特のサウンドを持っています。試すほどに自分の好みが分かってくるでしょう。

  

そして他のアート形態同様、マイク選びとは全て主観的なものです。

 


  

Tiny Deskのステレオ録音テクニック

  

【MS方式】

Sennheiser MKH 418-S(ショットガンマイク)には、カーディオイド指向性が1つ、双指向性が1つ使われています。モノラル互換性が素晴らしくステレオ幅も調整可能。

指向性とは?

  

【ORTF方式】

2本のカーディオイド指向性マイクを110°でステレオ配列用マイクバーに設置する方法。よりワイドで空間的なサウンドを出すため、僕はこのやり方でアップライトピアノ背面に設置しています。

 

 

【スペースド・ペア方式、AB方式】

2本の無指向性マイクを数十センチほど離して平行に設置する方法。Tiny Deskの幅広アングルカメラ上部に設置し、お客さんの声を録るのに使っている方法です。

 

  

⬆️『Tiny Desk Concert(タイニー・デスク・コンサート)』のレコーディング方法を公開。和訳はこちら

  

  

ダイナミック・ボーカルマイク

 

マイクを2本以上使うと楽器のバランスのコントロールが増します。また、ボーカル用に手持ちタイプのダイナミックマイクを使うのは最も一般的な方法ですね。でもマイクを近づけすぎると破裂音の回避が難しくなるのでご注意を。

 

 

Shure【シュア】SM58 

 

世界中のほとんどのステージで目にする由緒あるマイクSure SM58。偶然にも「SM」と付いていますがこのSMは「Studio Microphone(スタジオ・マイクロフォン)」の略です。このマイクは、真正面の音以外は全てカットする設計で、ボーカル強調や破裂音抑制を意図したEQカーブになっています。耐久性も良いです。

 

 

Heil Sound【ヘイルサウンド】PR 22 

 

ハンドリングノイズをシャットアウトし、大音量のスネアドラムの音も歪みなしで録音できます。マイク背面のノイズを除去する優れた設計なので、フィードバックが発生する前にステージモニターのレベルを十分に得られます。(黒/シルバー/ゴールドのグリル付属で自分好みにカスタム可能。)

 

 

Telefunken【テレフンケン】M80

 

 

ハンドヘルド型(手持ち型)ステージマイク。従来はもっと高価なコンデンサーに見られた明瞭さを兼ね備えています。このマイクを自家用SM58の代わりに出先で使うアーティストは多いです。最近だとCautious Clay(コーシャス・クレイ)が、Tiny Desk初の試みとなるSXSW(米国の大規模イベンド)での『Tiny Desk Family Hour』でこのマイクを使いました。カラーバリエーションがとても豊富で、ステージ上での見た目のポップさも抜群なマイクです。

 

 


  

金管楽器、キックドラム、タム、ボーカル用のラージダイアフラム・ダイナミックマイク

  

  

Heil Sound【ヘイルサウンド】PR 40

 

 

キックドラムに関しては、ラージダイアフラム・ダイナミックマイクに勝るものはありません(ポッドキャスト配信者の方はこのマイクをキックドラムじゃなく口元へどうぞ)。このマイクは周波数特性の帯域幅が広く、キックドラムの低音域のThump(サンプ)や高音域のsnap(スナップ)をとらえるのに役立ちます。僕がギターアンプの前に置くマイクに使うのは、PR 40より安価なPR 31 BWです。ごく一般的で更に安価なShure SM57と比べて音に温かみと深みが出るからです。とはいえSM57も、近接収音したスネアの音に関しては素晴らしい実力を発揮します。

 

 

Electro-Voice【エレクトロボイス】RE20

 

 

僕がこのマイクに向かって歌うとマヌケに見えますが…。キックドラムに使っても同等の存在感と温かみが出ます。ウィンタージャズフェスト期間中、このマイクでネイト・スミスと一緒に彼のスタジオで『Night Owl』シリーズを録音しました。他のハイエンド・マイク同様、低音ロールオフスイッチがあるので、ボーカルの破裂音を抑えたりローエンドの振動をなくしたい時に役立ちます。

 

 


 

 

ストリングス、パーカッション、ピアノ、客席用のスモールダイアフラム・コンデンサーマイク

 

Blue【ブルー】 Hummingbird

 

 

用途の広いコンデンサーマイクHummingbird(ハミングバード)。このマイクでペドリート・マルティネスのコンガ、スネア、カホン、シンバルの演奏や、パーカッションなど数え切れないほどたくさんのTiny Deskコンサートを録音しました。高い音圧レベルにも対応し、回転式ヘッドで完璧な収音位置に簡単にマイクを向けられます。お値打ち品ですしストリングス系のアコースティック楽器との相性も抜群です。(ぶっちゃけるとブルー・マイクロフォンは今年のTiny Deskコンテストのスポンサーです。)

 

 

Sennheiser【ゼンハイザー】MKH 40

 

  

このマイクの前ではどんなものも少しのEQ調整だけで素晴らしい音になります。破裂音とローエンドの振動を改善する低音ロールオフスイッチ付き、しかも10dBパッド搭載で大音量ソースに接続したミキサーのフェーダーの振れ幅を大きくしたい時に役立ちます。Tiny Deskでのピアノ録音には毎回ステレオペア(マイク2本セット)をORTF方式で使います。Tiny Deskで僕のお気に入りのチック・コリアのパフォーマンスで使われたセミグランドピアノもこの方法で録りました。ヨーヨー・マの静けさに包まれたチェロの演奏の時も微妙な音の差異を拾ってくれました。

 

 

Schoeps 【ショップス】CMC6(アンプ) + MK2 (カプセル)

 

 

NPRが長年かけて集めているドイツのメーカーSchoeps(ショップス)のマイクを使える僕はラッキーです。僕がお客さんの反応を録音するのに使うマイクはMK2、ペアで使います。演者側に向けたワイドカメラの約9フィート(約2.75m)上空にセットします。音はゆっくり進むので、全マイクのタイムアライメント(時間の調整)を行う意味で、その他全てのソースでディレイ時間を9ミリ秒に設定します。それから、カメラの上空に設置したSchoepsマイクのボリュームを上げてより大きな音で金管楽器を録音する際は、コムフィルターによる酷くこもった音を避けるようにしています。これは録音時までにそれらソースが時間調整がされているためです。

 

 


 

 

ストリングス、金管楽器など用のスモールダイアフラム・ミニチュア・コンデンサーマイク

 

AKG【アーカーゲー】 C519 M 

 

 

クリップ式マイクが素晴らしいのは、その楽器に直接装着するので常にオン・アクシスという点です。このC519Mはグースネック式で的確なポジショニングが可能です。アンディー・シャウフがWurlitzer (ウーリッツァー)のピアノを弾いた際にこのマイクで録音を行いました。

 

 

DPA 【ディーピーエー】 d:vote 4099

 

 

DPA(ディーピーエー)の人気ラべリアマイクd:screet 4060のクリップ式楽器用バージョンがこのd:vote 4099です。ラジオ番組『Wait Wait Don’t Tell Me』でもパネリストとホスト用に使われています。楽器用のマイクで、他のソースからの被りを防ぐスーパーカーディオイドです。チェロ、アップライトベース、バイオリン、ドラム、ギター、木管楽器、金管楽器、さらにアコーディオン用とクリップの種類も豊富です。僕は弦楽器奏者が演奏する時はいつもDPAのマイクを持っているか聞くようにしています。デスク後ろのスペースを大幅に節約できるからです。クリップ式ならマイクスタンドもいらないし、クラシック音楽の演奏者の場合は譜面台を使う事も多いので譜面台用のスペースも確保しやすくなります。

 

 


 

ボーカル、チェロ、ピアノ、アコースティックベース用のラージダイアフラム・コンデンサーマイク

 

Ear Trumpet Labs【イヤートランペットラボ】 Delphina 

 

 

Ear Trumpet Labs(イヤートランペットラボ)が作る機材は、スチームパンクをテーマにしたバーニングマン(米国の砂漠で行われる大型アートフェス)のオーディオエンジニアを思わせる見た目をしています。Tiny DeskではWeezerの回などでボーカル用にこのマイクを使いました。Delphinaはラージダイアフラム・コンデンサーで、温かみがあり自然な音で、口元に近づけ過ぎなくても親しみ易いながらも澄み切ったボーカルを再現できます。僕が初めて同社のマイクを見たのは、The Milk Carton Kids(ミルクカートンキッズ)がNPRのラジオ番組『Ask Me Another』の収録に持参した時でした。以来、その音(と見た目)を楽しんでいます。The Milk Carton Kidsは、PAシステムがある部屋でのフィードバック耐性を持つEdwina(エドウィーナ)モデルを使っています。

 

 

Blue【ブルー】 Mouse 

 

 

Blue社のマイクはものすごく扱いやすいです。このMouse(マウス)はどんな方向にも回転させられるのでベストな音を出すマイク配置の実験に便利で、後処理で直す必要もありません。このマイクは、ラウル・ミドンのアコースティックギターのメリハリやまとまり感の演出、Khruangbin(クルアンビン)のローラ・リーのベースのダイナミクスも見事に拾ってくれました。

 

 

Neumann【ノイマン】 U87 

 

 

 

NPRの本社、ウェスト、ニューヨーク支社では、U87が全てのマイクポジションに置いてあります。このマイクは音が澄み切っているので声によっては少々明るすぎることも。Tiny Deskではベースのロールオフに従事しているので特にです。双指向性スイッチで切り替えればマイク両面で収音できますし、M/Sステレオ録音のS信号をとらえる事もできます。(オムニ=無指向性に切り替えれば更に多くのオフ・アクシスソースを収音可能。)高性能かつ高価なマイクなので物凄く高い小道具として使う時以外は、Tiny Deskでは使いませんね。

 

 


 

金管楽器、ピアノ、ボーカル、ドラム頭上設置用のリボンマイク

 

Coles【コールズ】4038 スタジオリボンマイクロフォン

 

 

マイクに関する質問で一番多いのが(Tiny Deskで有名なステレオショットガンマイクを除く)、金管楽器に使っているColes(コールズ)製、英国BBCデザインのリボンマイクです。レスポンスはクリーンで周波数スペクトル全体を通して素直でフラットです。ぜひトランジェントやホーンセクションのニュアンスのとらえ方に注目して聞いてみてください。(注:リボンマイクは物凄くデリケートなのでミキサーやレコーダーのマイクプリアンプからのファンタム電源には絶対に繋がないでください。僕はリボンマイクを繋ぐ前に必ずファンタム電源がオフになっている事とチャンネルゲインがゼロになっている事を確認するようにしています。)

 

 

RCA 44 (ヴィンテージ希少品)

 

米国ラジオ局のWNYCには神々しいマイク陳列棚があり、そこにRCA44が4本保管されています。今までTiny Deskでこのマイクを使ったのはALA.NI(アラ・ニ)の回だけです。ご覧になれば分かりますが、大人気のRCA44リボンマイクはボーカルに使うとヴィンテージでシルクのようなクリーンなレスポンスを生み出してくれます。

 

 


 

さて、今回は世に出ている素晴らしいマイクの数々をご紹介しましたが、決して上記マイクだけに留まりません。Tiny Deskシリーズの音声を作るにはたゆまぬ努力が必要ですし、出演者一組一組が僕たちに新たな挑戦の機会を与えてくれます。有難いことに、今も生産が続く従来型マイクの力を借りながらも、絶え間ないテクノロジーの進化にもお世話になっています。

まだ見ぬマイクで新たな実験をする日が来るのを待ちきれません。

 

(写真)ジョシュ・ロゴシンのTwitterより

 

 

元記事 NPR: All Song Considered(英語)
https://www.npr.org/sections/allsongs/2019/04/02/705579879/tiny-tech-tips-microphones