Max Cooper&Bruce Brubaker:新作アルバム『Glassforms(グラスフォームス)』について

 

みんなが音楽を欲して必要としてるから、なくならないさ!

 

2020年6月8日

 

© Julien Bourgeois

 

  

20年が過ぎた21世紀の音楽シーンにおけるアプローチとして、Terry Riley(テリー・ライリー)、Steve Reich(スティーヴ・ライヒ)、Philip Glass(フィリップ・グラス)などのミニマル・ミュージックを代表するクラシックの作曲家らが電子音楽に与えた影響力は、誰の目にも顕著だ。とはいえ、アメリカ人ピアニストのBruce Brubaker(ブルース・ブルーベイカー)のように、そうした作曲家らの心を読み取るだけでなく、それに現代の息を吹き込むことのできる音楽家は少ない。ブルース・ブルーベイカーといえばピアノだが、彼の電子音楽への愛と尊敬は強く、自身の2018年のアルバム『Codex』においては様々なバージョンやリミックスを施しセカンドLPも出しており、Olga Bell(オルガ・ベル)やArandel(アランデル)との共作や、ブルース自身のシンセ主体の即興も聴くことができる。

 

ロンドンのレーベルInfine MusicからリリースとなるGlassforms(グラスフォームス)は、20世紀の巨匠フィリップ・グラスを解釈した曲の数々を収録し、現代エレクトロニカで最も有望なMax Cooper(マックス・クーパー)とコラボしたアルバムだ。マックス・クーパーはFieldsやMeshといったレーベルから4枚のLPをリリースしている。本作は、2019年にフィラルモニ・ド・パリから依頼を受けたことから生まれた。コンサート用のグランドピアノとシンセを組み合わせ、前衛的な電子技術を用いてダイナミックなライブ体験を作り出し、それがアルバムに収められた。また、パリのシテ・ドゥ・ラ・ミュージック、ロンドンのバービカン、バルセロナのソナーで行われた本作のライブは、クラブ好き、ポストクラシカル愛好家、長年のピアノ音楽ファンに至るまで異なるタイプの観客の心を一つにし、高い評価を得た。

 

 

新型コロナ以降、君の音楽の作り方は変わった?今までと違う未来の見方がある?

 

ブルース:テクノロジーは常に変化し、音楽の可能性を変え続けてる。すごく長い歴史だ。昔を懐かしむ部分もあるだろうけど私たちは常に未来に向かってる。みんなが音楽を欲して必要としてるから、なくならないさ!

 

 

© Vincent Ballard

  

 

『Glassforms』では多様性や脆弱性を感じるけど、聴き手が受ける気持ちとリンクする部分がある?本作で伝えたかったことは?

 

マックス:僕にとってブルースとの仕事やフィリップ・グラスの音楽に触れるのは初めてのことで、今回の体験全体を通して分かるのは、これが心の内反射や、ある種の催眠とか瞑想状態によるところが大きいってこと。一見すると音符数が少なく構造もシンプルなのに、15分もある曲をリスナーが座って聴く時間を取ろうと思えるほどの音楽を作れる人は多くない。でもこの音楽に携わって深く掘り下げるうちに、無限の豊かさや繋がりを見つけたし、電子音を増強剤として自分が表面化させたかった印象や感覚も分かった。そこには隠れた魔法があって、楽譜にもSNSにも載ってない。自分自身を全プロセスに捧げ、その時間の中で押し寄せてくるものなんだ

  

ブルース:このアルバムをパフォーマンスするときは、かなりの不確実性を伴う。アコースティックのピアノが鳴る中でソフトウェアとシンセがそれにどう反応するかは毎回違うんだ。だから可能性にオープンでいることや、以前とは違う新たな方法で音楽を作る心づもりでいるようになるよ。

 

 

フィリップ・グラスの最大の魅力は?

 

ブルース:数ある音楽の中で、フィリップは何か人間的に深くて真に感情的なものと繋がるシンプルな方法を分かってる。彼の音楽には純粋さがあってそれが多くの人の心を動かすのさ。

 

 

ライブ演奏に特化してこのアルバムを作った?

 

ブルース:レコーディングもやるだろうとは思ってたよ。ライブは毎回全然違うものになる。レコーディングは2019年にフィラルモニ・ド・パリでやったライブがベースになってるんだ。

 

 

フィリップ・グラスの作品で一番好きな所は?

 

ブルース:フィリップは西洋音楽に新しい時間体験をもたらした。ストーリー性じゃなく、今この瞬間に集中するタイプの音楽はとても美しくもなり得る。

 

 

フィリップ・グラスの音楽は不朽で、時の流れとともに残ると思う?

 

ブルース:私が一番面白いと思うのは、グラスの音楽が今、世界で人々の関心を引いているということ。この音楽の未来については考えていないと彼自身が言ってるよ。

 

 

 

 

本作で使ったソフトは?

 

マックス:僕たちはグラスの元の楽譜とそれがピアノで弾かれた時の人間らしい表現を求めてた。合成された要素をダイレクトに生み出すためにね。だからソフト開発者のアレクサンダー・ランドンと協力して、Max for Liveのデバイス上でMIDIが使えるグランドピアノからMIDIの音符情報を得て、その情報をグラス独特のキーやパターンを使ってMax上で調節できるようにした。ピアノからのオーディオフィードのグラニュラー処理もしたし、グラスの楽譜にある音符と合成音の音符や音色の間の繋がりをプログラム可能でありつつ予測できないものにするために、シンセの内部回路やエフェクトの調節もしたよ。エフェクトの下では僕たちが弾いた各断片が異なる電子楽器であり、一緒に弾いたり相互作用するための方法を2人ともが学ぶ必要があるんだ。

 

ブルース:アレクサンダー・ランドンの作ったソフトをこのアルバムのパフォーマンスに使ってるよ。

 

 

各断片が毎回違ったように聴こえさせたかった理由は?

 

マックス:半ば生成的で無秩序なシステムを持つことは、僕にとっては人生を扱うようなもの。美しいことが起きて、時にそれが手に余る。ライブ環境ではその音楽と戦ったり戯れることができるし、新たな発見もある。こういった全てが、単一の伝統的な楽器を弾けず、しかもグラスの楽譜とブルースの演奏から生まれるライブ表現の両方に忠実であり続ける中で起こるんだ。予測しやすくなると表現の可能性が減ると思う。それに、もともとはフィラルモニ・ド・パリからのライブパフォーマンスの依頼によるプロジェクトだったし、このレコードもそこから来てるからね。

 

ブルース:文字を読んだり再読することは、人間の文化や宗教の重要な部分だ。書き記された情報は変わらなくても、私たちの理解というのは発展し、進化し続ける。場所は時が変われば、新しい意味が生まれるものだよ。

 

 

次のプロジェクトについて教えて。

 

ブルース:『Glassforms』の大規模ライブツアーをやる予定だ。今現在は、私ひとりでピアノを使ってブライアン・イーノを違った形で象徴するプロジェクトに取り組んでいるよ。

 

 

元記事 Chromatic(英語)
https://www.chromatic-club.com/post/max-cooper-bruce-brubaker-glassforms