Lizzo(リゾ)「一日中部屋で泣きじゃくってたわ。『いま私が音楽を辞めたって、誰も気にしやしない』ってね。」

ELLE

2019年9月5日、アリソン・タケダ

写真:YVAN FABING

2019年はLizzoなくして音楽業界を語ることはできない年となった。Lizzoの “Juice”や“Boys”をリピートで聴いている人も多いだろう。シンガー、ラッパー、フルート奏者の彼女がフルートでソロをさりげなくキメつつ、体勢を低くし腰を振る挑発的なトゥワークダンスを踊る姿に世間は歓声をあげた。今ではLizzoがいない世界を想像するほうが難しいほどだが、実は2017年、のちに特大ヒットとなった“Truth Hurts”をリリースしたLizzoは音楽業界や人生について悩み、気力を失っていた。そして、同曲のプロデューサーに「音楽を辞めることを考えている」と告げた。Lizzoは、売れていなかった自分の音楽に血と汗と涙を費やすことに疲れ果ててしまったのだ。

「世の中に向けて音楽を投げ入れてるのに、バシャンっていう音すらしない感じよ」と、ツアーの合間に珍しく取れた短い休憩中にLizzoは話してくれた。「森の中で一本の木が倒れたのに音もしないような感覚。一日中部屋で泣きじゃくってたわ。『いま私が音楽を辞めたって、誰も気にしやしない』ってね。」そんなとき、彼女のプロデューサーがアパートにやって来て「たとえ世界が君の音楽を大事だと思わなくても、少なくとも僕ら二人にとっては大事な存在なんだよ」と励ましてくれた。「だから私はアーティストとして続けることにした。続けて本当によかったと思ってる、危ういところだったけど。」

そんな彼女の忍耐はすぐに実を結んだ。その運命的な日から2年後、爆発的大ヒットを記録し真のスターとなったのだ。全身ピンクの衣装でMETガラのレッドカーペットを自慢げに歩いたり、インスタグラムに自身のトゥワーク動画を投稿したり、彼女のやることすべてが注目を集めるようになった。4月にはコーチェラデビューを果たし、アトランティック・レコードからデビューアルバム“Cuz I Love You”をリリースした。2か月後のBETアワード2019では、“Truth Hurts”の陽気で圧倒的なパフォーマンスを披露した。バックダンサーを起用し、ウェディングケーキをテーマにしたセットでフルートのソロを響かせるパフォーマンスは、リアーナが立ち上がり歓声をあげるほどの盛り上がりを見せた。その他にも、アメリカの化粧品ブランドUrban Decay(アーバン・ディケイ)とのコラボレーションで美容関連の大規模なキャンペーンを実施、ジェニファー・ロペスやカーディ・Bなどの映画“ハスラーズ”に出演、ビルボードのTop100で5位を獲得、2019年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで最優秀新人賞を含む2つの賞にノミネートなど、その活躍は目覚ましい。“束の間の成功”という言葉では足りないだろう、Lizzoはまさに“その時”を迎えたのだ。

「一日中部屋で泣きじゃくってたわ。『いま私が音楽を辞めたって、誰も気にしやしない』ってね。」

しかしLizzoにとって、成功は必ずしもチャートの順位や再生回数や受賞数では測れない。彼女にとっての成功とは、自分が作りたい音楽を作り、それを聴くべき人たちの耳に届けることだ。「もし次のアルバムが今回のアルバムほどじゃなくてただの一発屋だったなら、今回に感謝するわ。今後はファン向けのツアーもやるつもりよ。ずっとツアーをして回ってるし、やめる理由なんてない。一生やるつもり。」

現在31歳のLizzoは、メリッサ・ジェファーソンとしてデトロイトで生まれ、小さい頃に音楽の虜になった。小学校3年生でポップソング書く女子グループを友達と結成し、5年生で家族とともにヒューストンに移ると学校のマーチングバンドでフルートを担当した。それ以後はずっとフルートを演奏している。(自らのフルートを「サーシャ・フルート」と名付けており専用のインスタグラム@sashabeflutingもある。この名前は、ビヨンセがもう一つの自己とする“サーシャ・フィアース”から取っている。)

写真:YVAN FABING

Lizzoは、ヒューストン大学に進学し音楽の勉強を続け、その後ミネアポリスに移った。そこで過ごした数年がキャリアの初期を最も形作ったと言う。全員女性メンバーで構成されたラップ/R&Bグループ、The Chalice and GRRRL PRTYのメンバーとして彼女がLizzoの名を名乗り始めたのはこの頃だ。また、バンドメンバーだったソフィア・エリスとともにプリンスの2014年のアルバム“プレクトラム・エレクトラム”に収録された曲“ボーイトラブル”に参加したのも同時期である。

「あの頃が恋しい」と、ミネソタで過ごした頃のことを懐かしそうに話すLizzo。「プリンスがそばに居たからだけじゃなくて、音楽や人生について若くてワクワクしてた。次に何が起こるかも分からないしお金もないくせに夢を語ってたあの頃が懐かしい。あの頃に得た冒険心は今も大事にしてる。人生や音楽に冒険心を忘れちゃいけない、常に限界に挑戦して自分が作り出している魔法を信じるんだ!って。」

「私が自己愛をものすごく真剣に考えてるのは、昔は自分のすべてを変えたいと思っていたから。ありのままの自分を好きになれなかった。」

Lizzoがある時から限界に挑戦し始めた大きな理由は自分自身にあった。昔はグループの一員としてパフォーマンスをすることに慣れていた。「スターやフロントマンの容姿を見て不安を感じてた、私には向いてないって。今のままじゃダメだろうな、みんな私に目をやりたくないだろうし、私が言わなくちゃって思ってる事なんて聞きなくないだろうって感じてた。」今でも一人でステージに立っているときは、観客が曲の合間に彼女の名前を呼ぶと不安になると言う。一方、ソロになる上で彼女にとって作詞は容易だった。「伝えたいことが胸の中にたくさんあった」と、ここにきてようやく自分の物語を話し出すLizzo。2013年に“Lizzobangers”、2015年に“Big GRRRL Small World”、そして2016年にはアトランティック・レコードからEP“Coconut Oil”をリリースした。この3枚のアルバムはどれも評判が良く、“Coconut Oil”に関してはビルボードのR&B/Hip-Hopアルバムチャートで首位に上り詰めたが、それでもまだ今ほどの世界的なセンセーションではなかった。

写真:YVAN FABING

その後、ジャンルに捉われないアルバム“Cuz I Love You”をリリースした。このアルバムは世の女性を元気づける「女子の夜遊びプレイリスト」としてだけでなく「失恋浄化サウンドトラック」としての役割も果たすこととなった。「私の曲はハッピーな感じだけど、実は悲しみや悔しさから生まれた曲。歌ってるのはいつも、希望の光だったり『虹の彼方に』みたいな瞬間なの。」特に“Soulmate”、“Truth Hurts”、“Crybaby”は涙ながらに作詞、録音したそうだ。「この3曲は実話で、その時々のリアル。『車を止めて』も実際に言ったし、『新しい彼はミネソタ・バイキングス(アメリカのフットボールチーム)』もホント、『昔の私は双子座の男を愛してた』ってのも事実!」

写真:YVAN FABING

自分をこれほどまでに露出し攻撃されやすい状態に置くことは容易なことではない。「私はコミュニケーションが最高に下手で、若い頃は感情表現がうまくできなかった。家族とも友達とも話さなくなっていったわ。暗い場所にどんどん潜り込んで、潜れば潜るほど出てこれなくなった。」その状況を変えようと多くの時間と努力を費やしたLizzoだったが、今は自分の気持ちを口に出すことを誇りに思っていると言う。6月にはインスタグラムで自身の精神衛生について話した。「落ち込んでるけど話せる相手がいない。誰にもどうにもできないことだから。人生って辛いわね。」と書いたLizzoの投稿に対し、すぐさまファンからたくさんのコメントが寄せられた。そこには愛や応援、声をあげてくれたことへの感謝、私たちがついていると知らせるメッセージが綴られていた。その翌日、Lizzoはこう返答している。「自分の気持ちに素直になることで命が救われるってことをこの24時間で学んだわ。手を伸ばすのが困難なときもあるけど、手を伸ばしたらすぐに心が愛で包まれた。」

これを省みたLizzoは数週間後、感情の伝え方を学ぶことが自分の人生において“革命”になっていると話している。「みんなが本当に気に掛けて助けてくれて、助けてもいいと思ってくれてることがハッキリ分かる。」Lizzoは今では気分が落ち込んだときは、誰か(あるいはネット上の大勢)に話すようにしているそうだ。「私にとっては暗い場所に陥ってしまうのは避けられないことだし、また落ちてしまうと思う。でも今の私はそうなる準備ができている。そして、対処するための色んなツールもあるし自分の助け方も知っている。これって精神衛生という長い旅ではすごく役に立つことよ。」

写真:YVAN FABING

定期的なセルフケアも有効で、Lizzoは自己愛のメッセージを取り入れている。彼女は自己愛の象徴のような存在となったが、アーティストとしてのその成功と同様、そうした自信やエンパワーメント(力をつけてやること)の感情を得るのは大変だったようだ。「私が自己愛をものすごく真剣に考えてるのは、昔は自分のすべてを変えたいと思っていたから。ありのままの自分を好きになれなかった。その理由は、お前は可愛くないってメディアや学校(の人)に言われたり、美容系の広告やテレビへの出演がなかったり…意思表示の不足だったり。自己嫌悪が悪化しすぎて他人になることを夢見てたの。でも他人になることは出来ないんだから、そんなことを夢見たって意味ないでしょ?」
最近のLizzoは、自分として生きることに幸せを感じている。現在のツアーや2020年に向けての新しい楽曲制作で忙しい彼女だが、そんな中でも今の成功を楽しむ時間を取るようにしている。ライブやツアー先で、一瞬一瞬に起こることを全力で感じようとしているのだ。例えば、ステージに立っていて客席から彼女を呼ぶ声がしたら、その声すべてに耳を傾け、それを体中に行き渡らせると言う。「一曲ごとにアンコールしてほしいわけじゃないけど、みんながそうしてくれることもある。そのときは両腕を開いて受け止めるの、だってそのアンコールは起こるべくして起こってることだから。すごく有難いことだわ。」

写真:YVAN FABING

元記事 ELLE (英語)
https://www.elle.com/culture/music/a28912168/lizzo-interview-october-2019-elle-cover/