インタビュー:“音の魔術師”リサ・ベラ・ドナが生み出す、心に残るシンセサウンドたち|Lisa Bella Donna

2020年10月29日
By ブラッド・パック

 

リサ・ベラ・ドナ

  

リサ・ベラ・ドナはマルチ奏者/作曲家/モジュラーシンセサイザー奏者である。セッションミュージシャンとして長年の経験があり、ミュジーク・コンクレート微分音音楽、オーケストレーション、映画音楽など、さまざまなジャンルにおいて広くテクニックを開発してきた。

 

リサは最近、2枚のアルバム『Night Flight』と『Orchards of Churchyard Departures』をリリースした。どちらも音的にハロウィンシーズンにマッチする作品となっており、アナログ・デジタル両方のシンセを幅広く屈指した暗くて不気味な音色がたくさん散りばめられている。10月31日のリリースを祝して、私たちはリサに“身の毛もよだつ”インタビューをさせてもらった。彼女のお気に入りのシンセ、全アルバムをテープに録る理由、ホラーやSF映画の楽曲制作のコツについて話を聞いた。

 


 

シンセやサウンドデザインを始めたキッカケは?

 

シンセはかなり早い時期にハマりました。私の母がいろんなジャンルの音楽を聴く人で、中でも母のお気に入りの一つが、ゲイリー・ライトの『Dream Weaver(夢織り人)』でした。ARP(アープ)やMoog(モーグ)シンセサイザーがふんだんに使われたアルバムです。母はよくそれを大音量で流して、私に「これが未来の音よ」と言ってました。その時の印象が私の中に強くあります。

 

母が再婚してすぐに継父が、継父は本当に多才で教養のある音楽リスナーだったんですが、当時9歳だった私にウェンディ・カルロスの『Switched-On Bach(スイッチト・オン・バッハ)』を聞かせてくれたんです。クラシックな音楽がものすごく美しくシンセサイザーでアレンジされていて衝撃を受けました。

 

それでもしばらくシンセサイザーは持っていなかったんですが、Wurlitzer Orbit III(オルガン)は持っていてその中にシンセが入ってました。10代後半でプロのセッションミュージシャンになり、スタジオの雑用係やテープエディターもやりました。そこで初めて、アナログシンセをちゃんと経験しました。当時人気だったシンセも。80年代半ばから後半のことです。

 

 

自身のコレクションでお気に入りのシンセは?

   

今でも当時手に入れたシンセをいくつか使ってます。ARP Odyssey(アープ・オデッセイ)やARP Axxe(アープ・アクシー)、ARP 2600は2つあるし、Moog Prodigy(モーグ・プロディジー)も1つあります、1987年に買ったものです。すべてここに置いてあるし、今でもよく使います。

  

ARP Omni(アープ・オムニ)は自分用に買った最初のシンセです。ARP Odysseyに関しては、当時働いてたスタジオにあったものを私がもらいました。スタジオの人は古いジャンク品と思ってたみたいで、そのOdysseyは主に他のデバイスのフィルターとして使われてましたね。

  

当時、スタジオではRoland B50、ヤマハのDX7、TX816が使われてました。今では大人気のシンセですが、当時の私はそのサウンドが全然好きじゃなくて。すごくリッチなサウンドのものを求めてたんです。オルガンのように触れるやつを。

       

 

 

サウンドデザインにベスト or 最も人気なシンセといえば?

 

Moog One(モーグ・ワン)は、購入できるシンセの中で最も用途の広いシンセの一つです。さまざまなレンジの音を作れます。ちゃんと試す前は見くびっていた部分もあって、もちろん素晴らしいシンセだろうとは思ってましたが、こんなに深みのあるシンセだとは知りませんでした。本当にすごいです。

 

ARP 2600Moog Matriarch(モーグ・メイトリアーク)も良いチョイスだと思います。Moogのエコシステムのセミモジュラーには素晴らしいのがいくつかあります。Moog15にかなうものはないですね。Moog15ほどローエンドを捉えてくれるものは他にありません。ARP 2500の音も唯一無二で、音を自在にコントロールできるので、ほとんど何だってできちゃいます。

 

最近のシンセで言えば、Novation(ノベーション)がすごく独特なサウンドのシンセをいくつか作ってると思うし、GRP(ジーアールピー)も。あと、UDO(ユーディーオー)のSuper 6(スーパーシックス)も素晴らしいアナログシンセです。

 

 

他にはどんな楽器やコントローラーを音楽制作に使ってる?

 

今は主にシンセですが、私は長年、ジャズドラマー、キーボーディスト、ギタリストもしていました。R&Bやネオソウルのバンドでキーボーディスト兼ギタリストとしてもプレイしていますし、プログレのデスメタルバンドで10年間ギタリストをやってたこともあります。コンテンポラリーなカントリーミュージックもやったりしましたよ。私はマルチ奏者であり、こうしたスタイルすべての要素が私の音楽に表れてるんです。

 

でも最近は、自分が大好きなことをやろうと決めました。それがシンセシス(合成)です。シンセシスをしてると自己のコントロールが得られて、頭の中のアイデアを再現して自由になれる感じがします。他の楽器ではフィジカル面を円滑化したがために、特定の鳴り方しかしなくて音の鳴りを再創造できないことがあります。シンセシスができると障害になるものがそれほどなく、“自分の世界”の主導権をしっかりと握れる感じがします。

 

 

レコーディングのプロセスを教えて。機材は何を使う?

 

アナログのオープンリール・テープレコーダーとDAWを組み合わせて使います。やることやアイデアによりますね。16トラックのテープレコーダーで録音することが多いです。色彩や背景を多少操ることができるからです。それに、このやり方だとコミットしなくちゃと思えるし、それに向けて計画をする気にさせてくれるんです。

 

4つの8チャンネルテープレコーダーも持ってます。そのうち一つを使って丸ごと一作品を作ることもあれば、4つ全部つないで違った動きを生み出すこともあります。そのあとミックスダウンの際に、同時多発的に次々とスタートしてミキサーでそれらをフェードインさせます。私の曲はこの方法で作られるものも多いです。通常はコンピューターにミックスダウンして、味付けしたり要らないものを取り除いたりします。

 

 

お気に入りのソフトシンセやプラグインは?

 

Abbey Road(アビーロード)のバンドルがすごく好きです。私のアルバムにもよく使います。Neunaber Wet Reverberator(ヌーネイバー・ウェット・リバーブレーター)のプラグインも大好きです。それから、Sound Toys(サウンドトイズ)の特にフェイザーやPrimal Tap(プライマルタップ)などのディレイが好きです。プラグイン版だとすごく便利ですよね!でも私はプラグインはすごくたくさんは使いません。たまにクライアントから「もっとデジタルなサウンドや雰囲気にしてほしい」と頼まれることがあるので、その時はSpectrasonics(スペクトラソニックス)が重宝してます。

 

 

新アルバム『Night Fight』の暗くて不気味なシンセサウンドはどうやって作ったの?

 

アーティストとして、コントラストは私にとって絶大な影響力を持っています。聴く人が深み感じられるような音作りが好きなんです。いつも暗い感じにしたいわけではないですが、私たちはみんなそれぞれの状況を抱えていて、そこには常に“ダークネス(闇)”の波があります。

 

シンセサイザーを使うと、音響心理学的に特定の感情を呼び起こす身体・心理部分を奮い起こすことができます。16ペダルレンジにシンセをいくつか入れて一緒に動かせば、聴く人を虜にするステレオサウンド感を作り出すこともできます。

 

私は、聴く人が安心できる空間を作ることが自分の責任だと感じています。たとえ自分の音楽がとても暗くて強烈なものになり得るとしてもです。これは大事なことで、音楽が作られる上での魅力や特権だと思います。

 

暗いサウンドを作るコツの一つは、私が“マザー・モジュラー”と呼んでいる8ボイスのMother-32たちを使うことですね。ポリシンセとポリなインターフェースにつなげることで8つまでオシレーターを使えます。最高に楽しいですよ!すごくヘビーなものが乗っかってる感覚を与えてくれます。

  

 

 

音楽やその他、一番影響を受けた人物は?

 

間違いなくウェンディ・カルロス。彼女は達人です!『Timesteps』『Tales of Heaven and Hell』『Sonic Seasonings』は傑作ですね。ウェンディは私にとって偉大な存在です。他にもアラン・ホールズワーステリエ・リピダルエリアーヌ・ラディーグ、ローリー・シュピーゲル(作曲家)、チック・コリアもすごく好きです。

 

初期のころに発掘した無名の女性エレクトロニック・ミュージシャンもたくさんいます。Beverly D’Fries D’albertも大好きで、彼女のアルバム『Mental Sailing』ではARP 2500EMU(イーミュー)のシンセが使われています。深みがあって素晴らしいアルバムです。彼女からも大きな影響を受けたし、ミュジーク・コンクレートの作曲家であるヨーロッパのナターシャ・バレットも好きです。

 

スティーヴン・キング(小説家)やロバート・モンロー(心理学者)にも大きな影響を受けました。ジョージ・ロメロ(映画監督)や彼のカメラマン、マイケル・ゴーニックもそうで、私の音楽アレンジ法にも影響してます。

 

ボブ・ブルックマイヤーは、ジャズ作曲家でトロンボーン奏者ですが、彼からも極めて大きな影響を受けました。個人的にも少し関わったことがあります。私がシンセシスにハマるきっかけとなったジョー・ザヴィヌルとつなげてくれたのもボブです。

 

 

お気に入りのホラー/SF映画は?

 

ホラー映画は大好きで、長いあいだ私のインスピレーションの一部であり、私の作品にもそれが表れています。変わらず大好きなアルバムで、映画としてもお気に入りなのが1968年のオリジナル版『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』です。正しい年齢かつ正しいタイミングで出会うことができたと思います。この映画の楽曲とイメージが素晴らしすぎて10代前半でどハマりしました。

 

当時持っていたVCR(ビデオカセットレコーダー)の左チャンネルからカセットを録音したのを覚えています。当時ほとんどのVCRはステレオじゃなかったんです。私は住んでいた町の裏通りを延々と歩きながら、この音楽をただただ研究しました。今でも私の音楽への感覚に大きな影響を与えてくれてます。

 

それから25年経ってオリジナルLPをゲットすることができました。バンドをやっていた時のドラマーがeBayで見つけてくれたんです。200ドルの価値が出る前の話です。磨耗しないように気をつけてます…

 

 

ホラー映画とSF映画の音楽の違いは何だと思う?

 

テンションとリリースの使い方が少し違うと思います。ホラーの方がSFよりテンションとリリースがやや支配力を持っています。フラット5のsusコードや、メジャー7thのスーパーインポジションを使ったマイナーコードを使うことで、その類のテンションがとても美しくなります。

 

Fメジャーの上にEマイナーを乗せると、夜に森にいるような葛藤を感じさせるテンションになります。特定のサステインの使い方やそういったものを使うのもホラー映画にはとても重要なポイントです

 

SF映画では、もう少しだけサウンドデザインや心理音響的な活動を掘り下げることができますね。単にオーケストラやシンセをサウンドエフェクトとして使うだけに留まりません。

 

ホラー映画では、無作為に操作されたチェロの音だったり、葉っぱが這うようなバイオリンの音といった聴覚的な効果が多いですが、SF映画では、モジュラーシンセとか、フィルターやフェイザーがふんだんに使われた音が定番ですよね。何かにフェーズをかけたりハードコーンフィルターを作えば、音がある次元から別の次元へと移り変わるような感覚を与えることができます。

 

 

ハロウィンには何をするのが好き?

 

9才の娘とお菓子をもらいに行くのが好きです。ここ9年間はずっと娘と回っています。娘は脅かされるのはあまり好きじゃないけど、すごく野性味溢れる想像力を持ってる子です。

 

今年はコロナもあっていつもと違うハロウィンになると思うけど、私たちは田舎に住んでるので何をしようか考えたいですね。ジャックオランタンでイースターのタマゴ探しとか。

 

子供を持つ前は、よくハロウィンのショーに出てました。みんなで変装して、3階建ての綺麗な大聖堂で演奏してました。電子とアコースティックを組み合わせたイイ感じのパフォーマンスなんかしたりして。

 

 

 

好きな映画の悪役は?その理由も教えて。

 

『呪われた町』の吸血鬼ですね。大好きな映画の一つで、音楽も素晴らしいです。あの吸血鬼も大好き、かなり的確な描写だと思います。あの頃にしては驚くほど邪悪で冷たくて、冷たさを感じさせます。

 

みんなで棺桶を開けにいって吸血鬼の目が開くシーンがすごく好きです。かなり印象的です。地下室のドアがきしきしと音を立てて開くと、犠牲になった町中の人たちが目を覚まして白目をむくシーンなんて最高ですね。

 

 

ホラー映画に出るとしたら、どんな死に方をしたい?

 

吸血鬼になりたいです。そういうの大好きなんです。すごく美しくて官能的で悪魔チックな見た目がいいです。悪霊喚起みたいな感じで、人々が私の魂を追い出すために呪われた森の神聖な場所にやって来るとか。

 

The Horror of Elizabeth Cemetery』というコンセプチュアルな作品があって私も持ってるんですが、姿を変化させるゴーストに取り憑かれた儀式のお話なんです。この作品の中で中心的な登場人物のエリザベスは悪魔祓いをされるんですが、エリザベスがもう悪魔払いに耐えきれなくなった時に、空中浮揚する別のものになってしまいます。そしてすべての星幽体の空間が開かれて、あたりには地獄の炎が燃え盛り、そうした美しいものがその開かれた空間に一気に放出されるんです。エリザベスは猫になり、それから美しい花嫁に、そして最後には吸血鬼になり無限の宇宙へとその口を開きます。

 

その時点で、森ではありとあらゆる振動や共鳴が起きていて、光はプリズムとなり蘇らんとする様々な魂を映し出します。そして森の死者の魂たちはみな川を渡り、氾濫する水に彼らの顔が浮かび上がります。

 

やがてすべてがピークに達して空間が爆発すると、そのゴーストは美しく滑らかで光沢のある白いハトになり、日の出とともに飛び去るんです。私はこの作品が大好きで。ホラー小説や映画の熱狂的ファンなんです。

 

 

元記事 VINTAGE KING(英語)
https://vintageking.com/blog/2020/10/lisa-bella-donna-halloween/

 

 

 

 

 

 

  

  

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