Sade (シャーデー)|何を言わずともカルチャーに浸透する存在 (2/2)

“クールさ”が際立つSadeのクワイエットストーム
2017年10月25日
Byジェイコブ・バーンスタイン

 アルバート・ワトソン氏撮影の“Sade, London, 1992”。Sadeのアルバム“Love Deluxe”のジャケットに使われ、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーの常設コレクションにも含まれている。

“Stronger Than Pride”から4年後の1992年、“Love Deluxe”がリリースされた。もうレコーディングするためにスタジオに入ることはなかったかも、でもバンドメンバーが制作再開を望んだからと、Sadeは微笑みながらベック氏に話した。「素敵な話だと思ったよ」と同氏。(1992年のインタビューでSadeは「前作を踏まえて別のアルバムを作るのではなく、一旦制作をやめて良かった。なぜレコード制作をしているのか考えることができるから」と話している。)

その後、Vogue誌の写真やSadeのビデオも数多く手がけるアルバート・ワトソン氏とアルバムの写真撮影が行われ、同氏の提案により全身メタリック色に塗られたトップレスのSadeが手で胸部を隠すアルバムジャケットが生まれた。

「Sadeは『いいですよ、あなたのためにやります。でもアルバムのジャケットにはしてほしくない』と言いった」と話すワトソン氏。「だから私は『これは君のための撮影だ。撮れたものは君の好きに使っていい』と伝えると彼女は写真を見て、セクシーすぎると言った。」バンドメンバーと話し合い、最終的にはその写真を使うことに同意したSadeだったが、彼女本来の自分の見せ方とは大きく外れたイメージとなったことに変わりはない。

1年後、Sadeは“Pearls”のハウスリミックスのリリースを断ったが、その理由はおそらく、ソマリアの内戦について歌ったこの曲でみんなが踊るのはいささか不適切だと考えたからだろう。その後、同曲のブートレグ(権利者に無断で発売または流通される非合法商品)がジュニア・ヴァスケスやフランキー・ナックルズなどのDJたちに出回り、この時代を特徴づけるクラブナンバーとなった。

1995年、スペイン人映画監督カルロス・プリエゴとの結婚に終止符を打った。Sadeはこれを、二人にとって世界的な名声とプライベートのバランスを取ることが難しくなったため、とのちに話している。一時はボブ・モーガンとジャマイカに住んでいたこともあり、同氏との間に一児をもうけた。

そして“Love Deluxe”から8年をかけ“Lover’s Rock”がリリースされた。このアルバムは恋愛についての内容も多いが、黒人問題の曲としても静かな影響力を見せた。“King of Sorrow”のビデオクリップはSadeらしさが全開だ。フォーマルなロングドレスにバンダナ姿で子供の靴を洗う様子は、片親で子育てすることの訓話か、それとも、それをテーマにした一つのファッションの提案か、いずれにせよ素晴らしい作品だった。

2010年までには、元消防士のイアン・ワッツと関係が深まっていた。互いに連れ子が一人ずつおり、イギリスの田舎のストラウド周辺の小さな別荘で暮らした。

この静かで贅沢な期間に彼女の伝説が育まれた。寄生的な音楽ビジネスのせいで、Sade以前にも多くの黒人女性シンガーが世間からの隔絶を余儀なくされた。しかしSadeにとっては、この期間が動揺の時期ではなく繁栄の時期だったように思われる。

ファンは彼女のことをもっと知りたがってはいたが、プライベートを守る断固とした姿勢を尊重した。


彼女の不在は疑念を抱くほど全面的なものではない。2001年と2011年のツアーでは、その人気が健在であることが示された。(そして不在の間も大衆の関心は増すばかりで、2001年のアルバム“Lover’s Rock”のツアーの総収益は2600万ドル、“Soldier of Love”のツアーでは5000万ドルだった。)

2012年、アルバート・ワトソン氏がハンブルグで行った回顧展にSadeはなんの仰々しさもなく現れた。ただ友達に会いに来たかのような様子で同氏と話をし、明るい笑みを浮かべた。トレードマークのイヤリングに、シルクのシャツを着てジーンズを履いていた。

作品を鑑賞するには人が多すぎたので彼女は翌朝出直したよ、とワトソン氏。

Sadeは猫好きの実子のインスタグラムにも時々現れる。今年の母の日には昔の親子写真が投稿された。1月に迎えた58歳の誕生日には、とても幸せそうな最近の彼女の姿を見ることができた。

露出や情報は少なくても、Sadeのファッションを真似する姿は至る所で見受けられる。つい先週、ニューヨークタイムズ・スタイルマガジンの表紙では、ニッキー・ミナージュが黒髪のポニーテルにゴールドのフープイヤリングを付けたSadeファッションで登場した。

同マガジンのエンターテイメント・ディレクター、ローレン・タバックバンク氏に、注目している人物を聞くと「Sade」と即答した。「人の反応は読めないものだけど、Sadeの場合はすべてのジャンルのミュージシャンから尊敬され賞讃されている。ニッキー・ミナージュはSadeの写真を見て“これヤバい”って感じでした。Sadeには、高価でカッコよくて時代を問わない雰囲気がある。」

来年あたりにアルバムを出すのではとの噂もあるが、定期的に会っているワトソン氏ですら分からないと言う。

「Sadeはいつもそんな感じだ」と同氏。「時間が経てば、また作り始めるだろう。彼女にとっては日曜日の朝にベッドから出るようなもの。やりたくはないけど、そのうちやるさ。」

「彼女と一緒に仕事をして最初に良い成果が出た時、私はこう言った。“この女性は90歳になってもヒットアルバムを出せるだろう”と。意識していようといまいと、せわしなく経歴をアピールしてくるような騒がしさの無い人には、みんな特別な評価をしているはず。Sadeは完全に唯一無二の存在だよ。

同インタビュー Part 1 ↓

元記事 The New York Times(英語)
https://www.nytimes.com/2017/10/25/style/sade-sade-sade.html