9thワンダー&ミシェル・ンデゲオチェロ |スターでありながら名声に中指立てて我が道を行く|9th Wonder & Meshell Ndegeocelloインタビュー (1/4)

  

2018/05/04にYoutube公開、コメント欄ではインタビュアーの質問の上手さにも賞賛のコメントが寄せられている。

  

司会はレイチェル・ヒスロップ(以下:R)。9th Wonderは悪天候によりフライトキャンセルのため、後ほど電話で参加。Red Bullの会場でネイティブインストゥルメンツ、ミシェル・ンデゲオチェロ(以下:M)と共に創造性について語る。

   

  

R:「創造性」「イノベーション」「テクノロジー」のつながりについて話していきます。だいぶ遡って、初めて書いた曲について教えて。

M: まずはテクノロジーを買い揃えないといけないでしょ。私はベースがよかったんで、最初は兄弟の友人からもらったベースを始めた。父がローズピアノを持ってたし、貯金して4トラックカセットレコーダーも買った。だから最初に書いたのはローズピアノにベースが入った曲だった。

  

  

R: 歌詞は?

M: ははは(笑)父のジャズ好きの影響で最初に頭に浮かんでいたのは即興とかジャズだったから歌詞はなかったと思う。必要なときだけ自分で歌うけどね。いつもだれかに歌って欲しいと思ってた。

  

やるって言って本当にやってくれた人はいなかったから自分で歌っただけ。

  

R: いい加減な友達のおかげであなたの歌が聴けてるわけね。その薄情な友達に感謝。(笑)

M: まあね。

レイチェル・ヒスロップ(左)とミシェル・ンデゲオチェロ(右)

  

  

R: 初期の作品のほうがテクノロジーや演出が多くて、そのあとは削ぎ落としていってるようだけど、それはコラボしたアーティストの影響?

M: 全部後から考えればの話で、何がそうさせたのかは定かじゃないけど…私はゴーゴーが盛んなDCで本物の演奏を見て育った。10人が1つのことに集中してる姿にはパワーがある。初めて契約を取った当初は全部自分でやってた。ただ座って細部にまでこだわってビートを作ってプログラミングするしかなくて、そうやってコンセプトを考えた。その後ジョン・メレンキャンプとレコード制作したんだけど、彼は「とりあえずみんな部屋に入って弾こうぜ」って感じで、そんな体験は初めてで刺激的だった。直感的なゾーンから始めた制作だった。私はブライアン・イーノが大好きなんだけど、彼らとの制作では本物のミュージシャンとも演奏できて、かつ、細部にこだわるプログラミングや演出もできた。そこには人間の感情も表現としてちゃんと残ってたし。

人と作るのが好き。パソコンの前で音楽を作るのも大好きだけど、近距離しか見えなくなる。人と作ると説明できない何かが生まれるんだよね。

  

  

R: なるほど、次の質問に繋がってるわ。テクノロジーがあなたにとって新たな表現方法を生んだと思う?それとも人と演奏するときに得る創造性から引き離されるような妨げになった?

M: テクノロジーは大好き。私を隔離して、満足させてくれる。きっと自分の音楽を人に聞いてほしいって思わなくなってきてるのかも。悲しいことに、私は究極的なとこがあって、一人きりにしてくれるテクノロジーが好きで、そう言った意味でテクノロジーはありがたい。でも人と作ることの素晴らしさは言葉では説明できない部分がある。

  

  

司会のレイチェル・ヒスロップ

  

R: 創作プロセスはどう?制作する中で変わるとは思うけど、そのゾーンに入るには何が必要で、着想から最終作品までどんな感じ?

   

M: 誰に向けて作るかによる。テレビ用なら、自分の嗜好じゃなくその人の求めてる色や楽器構成を考える必要がある。そのシーンを見ながらパソコンの前に座ってキーボードで作ったりね。

相手がアーティストで一緒に作曲するなら、私がキーボードを担当して作曲していくのか、私より良いアイデアが出せそうなミュージシャンを呼んできて集団的に作ったほうが良いのか様子を見る。

パット・メセニーが作った奇妙で複雑なメロディーに歌詞を乗せてくれと頼まれて試行錯誤したこともある。ヘッドフォンでそのメロディーを聴きながら、ほんとにもう歩けないってほど歩いて歌詞を考えた。料理しながら何度もくり返し聴くこともある。そうやってこれでレコード作りたいなって思ったら…と言っても、ここで言ってるのは初期衝動とは違う。曲の作り始めはエネルギーに溢れていて、この曲を聴いてくれって感じがあるけど、そのことじゃない。

  

私はスピリチュアルな人間だからメッセージが降りて来るのを待つ。部屋で一人で色々弾いてみたり。つまんないよ、でもやるしかない。決まったやり方や正しい方法なんてなくて、私の場合は、まさに降りて来るのを待つの。

  

  


R: 締め切りが迫ってたら?ライターとして私も締め切りに追われる身よ。行き詰ることもあるでしょ。


M: R&Bやポップなら、メロディーと言葉とビートが人気要素だから、締め切りがあってそのジャンルって決まってるなら、そういう要素を強調してから色を足していく。

  

  


R: マドンナとオプラの二大巨頭とコラボしてるわね。時系列でいくけど、マドンナは当初Tupacとコラボ予定だったけど彼が捕まっちゃって、あなたに声がかかった時のことを教えて。でもTupacの次に選ばれたからって自分のことを下げて言わないでね(笑)

  

M: Tupacが捕まったから私になったか、なるほど。私はそれ以上のことだと思ってる。人間関係って時に変化するでしょ、もうその人が欲しくなくなって、代わりにこの人が良いって。運です。私はバークリー音楽大学でたまに教えてたことがある、あんまり好きじゃなかったけど。

  

今から話すことって普通はあんまり話したくないと思うけど…

  

ミシェル・ンデゲオチェロ

  

話が逸れてたらゴメンね、マドンナとのコラボの話は私にとってはこういうこと。もしたくさんライブをする徳の高いミュージシャンになりたかったら、座って一人で一日数時間練習する努力をしなくちゃいけない。もしスターになりたいなら、保証こそないけど、そのための道はある。表に出て売り出すこと。素早く立ち回って、商業的なやり方に合う曲を書くこと。”The Hit Factory”って本がすごく良かった。

 

でも結局は全部、運。正しい場所に間違ったタイミング…じゃなくて正しいタイミングでいれば良いだけ。今のはフロイト的失言のつもりだったんだけど、私は正しい場所に間違ったタイミングでいたってわけ。(笑)

  

マドンナが私を選んだのは、彼女が私に目をつけてて私が違った雰囲気を与えてあげられたから。運があれば事は起こるものです。

  

  

  

R: 2つ聞きたい事がある。“運”の概念についてと、2つの道について。ポップスターへの階段と…

M: その2つの道の間には、もっといろんな道があるよ。

  

R: えぇ、でもあなたの場合は、スターでありながら名声に中指立てて我が道を行ってるレアなケースだと思うの。

M: 無意識でやってるかもしれない。人は他人の軌跡や偉業を意識するものでしょ。多分当時は自分では決められない選択があって、こう思ってた。20年前はきわどくてセクシーで変な曲を出してたけど、今の私は格好も中身も変化してるのに大衆はその時と同じ私を期待してる。  

私はそんなことには興味がないし今を生きようとしてるけど、有名になるためには大衆が好きな”私”をくり返すことを受け入れなくちゃいけないって。でもそれが苦手だった。

私は好奇心旺盛で、バーブラ・ストライサンドもエイサップ・ファーグも聴くタイプだから。全然違う種類の音楽を楽しむつもりだし、その流動性は持っていたい。これって自分がどう充実して生きるかの話。そこで自分に問いかけるの。「アーティスト、特に有色人種で、ドラッグで死んでもいないし全てを失ってもいない人はいるのか」って。

  

R: 分かる人いる?

  

(客)ミシェル、君だよ。

  

M: 私には手にしてないものも色々あるから。でも面白い質問でしょ。ウォルター・ベッカー然り、他人を見ればどうなるかが分かる。

だから未来を写した選択肢じゃなくて、今を生きるためにどんな選択をするか。何を諦めるか、自分が成功したと思えるにはどんな選択をすべきか、これは人によって違う。

昔、私がレコードを作ってた時なんかは他に10人くらい関わっていて、彼らが私に何が大事かを言ってきたけど、今はすごく自由で、自分の音楽を聴いて欲しかったら聴いてもらえる環境がある。それって恵まれてることですよ。

  

R: すごく良い話だわ。

  

M: からかってる?(笑)

  

R: まさか!こんなに話が進むと思ってなかったけど本当に良い話。じゃあ、運の概念について教えて。勤勉さは無くても運だけでやっていける?


M: もちろん、そんなことは数学的にあり得ない。

同インタビューPart 2↓