いま世界一話題の10代、ビリー・アイリッシュ|Billie Eilish|NMEインタビュー(1/2)

NME

  

2019年にブレイクが予想される新進気鋭のアーティストを集めたNME100(2019年1月7日公開予定)のローンチに伴い、トーマス・スミスはビリー・アイリッシュに会いにLAへ向かった。ビリー・アイリッシュはジャンルにとらわれない音楽を生み出す10代のシンガーソングライターで、ミレニアル世代のアーティストたちを脇へ退かせるほどの人気を見せている。

  

ビリー・アイリッシュ、2019年は彼女のもの(写真:Rachael Wright)

  

LAにあるゴテゴテに飾り付けられたおとぎの国のようなアパートでインタビューを行った。派手な壁紙や、中を空にし水槽に改造したビンテージのテレビ、そしてツンとするお香の匂いがそこら中に漂っていた。壁にはたくさんの物が不安定にぶら下げられ、ひと吹きしたら崩れ落ちそうだ。アパートのオーナーからはこんな忠告があった。「寝室のシャンデリアには触らないで、本当に大変なことになるから。」これを聞いた若干17歳のビリーはニヤリと笑みを浮かべ、手が確かにシャンデリアのほうへ動いた。

  

「私、やるなって言われるとやっちゃうタイプなんだ」と話すビリー。

  

10代のビリーは反抗期のはずだが、彼女の“fuck you(くたばれ)”の態度には人の心を引き付けるものがある。そう思わせられるのはほんの一握りの人だけだ。ビリーは長い撮影を終えると、アメリカのテレビネットワークNBCから頼まれていた年末放送用の元気な新年のあいさつを撮ることになった。

  

彼らの希望どおり明るい雰囲気を出すため、何テイクも撮り直しが行われた。7テイク目にしてようやく成功するかに思えたが、最後にカメラに向かって投げキッスをして終了のはずが、ビリーは間際に中指を立てた。一日中付き添っていた母親のマギー・ベアードは、撮影が無駄になったと腹を立てた。

  

「編集用に最後は一拍沈黙を置かないとダメでしょ」と言う母に、「やったじゃん」と答えるビリー。「これが私の一拍なの」と言い、もう一度中指を立てた。

  

“10代は自分が今生きてる国のことを誰よりも分かってる”–ビリー・アイリッシュ

 

私たちが初めてビリーに会ったのは2017年、ニューヨークだった。彼女のファーストにして今まで唯一のEP“Don’t Smile At Me”がリリースされてから数か月後のことで、状況は今とは少し違った。彼女は礼儀正しく愉快ではあったが、ツアーで毎晩、街から街へと飛び回ることに慣れようとしていた。

  

今回12月、再度インタビューをするために私たちはビリーの地元LAを訪ねた。彼女の人生とキャリアに劇的な変化があったことは言うまでもない。甘いポップな歌声にブラッシュヒップホップのエッジを効かせた7曲入りのデビューEPは、イギリスとアメリカの両国のアルバムチャートで年間を通して流行している。あちこちのフェスにも引っ張りだこで、自身のインスタグラム(@wherearetheavocados)ではSZAやジュリア・ロバーツなどの著名人らと並び、カメラに向けしかめっ面を披露している。

  

ロンドンにある2000人収容のシェパーズ・ブッシュ・エンパイアでの3公演を含む今春のイギリス・ヨーロッパツアーはすでに完売。2019年前半にはアルバムをリリース予定で、晴れやかさを感じさせる最近のシングル“Come Out and Play”と夏のヒット曲“You Should See Me In A Crown”が含まれる。曲の歌詞どおりビリーは、“このつまらない街を私のいいなりにする”準備が整ったようだ。

  

「みんな若者の知性を過小評価してる。何もかもが初めてで新鮮な体験をしている若い心にはパワーがある」とビリー。「私たち若者は無視されてるけど、そんなのバカげてるよ。若者は全部よく分かってるのに。」

  

  

ビリーが育ったのは、LAの近所で今回NMEが撮影を行ったウェスト・ハリウッドにあるザ・グレイスランドインから30分のハイランドパークだ。彼女はツアーがないときは、共同楽曲制作者で俳優の兄フィネアスと今もそこに住んでいる。フィネアスは過去にテレビ番組『グリー』などに出演経験もある。二人の両親マギー・ベアードとパトリック・オコネルも二人とも役者で、できる限りビリーのツアーに同行している。

  

「ハイランドパークは今では評判がいいけど前は全然ちがった」と、自身の生い立ちを語るビリー。「銃声が聞こえたりするヤバいところだった。私の生い立ちについてみんな色々言うけど、当たってない。私をLA出身のただの金持ちの娘だと思ってる。」

  

当時のビリーにとっては家だけが守られた場所であり、学びの場だった。彼女は、その家があったからこそアーティストとしての今の自分があると考える。「(普通の)学校に行ってたら、誰にも真剣に考えてもらえなかっただろうし、そうなってたら恐ろしい」と話すビリー。

  

「ライブに来てくれる人の中には、私をモチーフにした作品や動画を持って来てくれる人がたくさんいる。そういうときに思うんだ、“なんでキミは編集者じゃないの?映像監督になれば?”って。アイデアを思いつくのに年齢なんて関係ない。天才はそこら中にいるよ。」

  

ビリーが覚えている限りでは、楽曲制作は兄の寝室に作った間に合わせのスタジオで行ってきたと言う。

 

「“いつ歌い始めたの?”って聞かれるけど変な質問だなと思う。いつも歌ったりメロディーを作ってたから。私たち家族にとっては当たり前のこと。そうじゃない家族に出会うと“マジで”って思ってた。」

  

“音楽業界はクソだけど、私はこうなってなかったら惨めだったと思う”
-ビリー・アイリッシュ

 

2015年後半、彼女は幻想的なバラード“Ocean Eyes”を録音した。この曲は元々、兄フィネアスが当時やっていたバンドThe Slightlysのために彼が書いた曲だった。サウンドクラウドにアップされ、それをビリーが振り付けを手伝ってもらっていたダンスの先生に送った。するとこの曲が拡散され、ビリーにマネージャーが付き、同曲は一年後の2016年11月にインタースコープ・レコ―ド(The 1975、ラナ・デル・レイ、レディー・ガガなど)からリリースされた。同曲は今日までに、Spotifyで1億3千2百万回再生、動画はYoutubeで5千5百万回再生されている。

  

  

ビリーは彼女の同世代と同じく、ごく多様なアーティストの音楽を聴き影響を受けてきた。ウェスト・ハリウッドで丸一日がかりの撮影中、彼女は音楽を聴いてリラックスする姿を見せた。聴いていたのはアメリカで人気急上昇中のラッパー、ティエラ・ワックの全尺15分のアルバム“Whack World”や、ザ・ストロークス、アークティック・モンキーズだった。去年会ったときには、ビートルズやアヴリル・ラヴィーンが特にお気に入りだと話していた。

  

影響を受けたアーティストは割と伝統的だが、ビリーの音楽はとても現代的だ。同世代の希望や不安、傷つきやすさ、悲痛などが、フィネアスのアイデアとともに曲の中に反映されている。

  

デビューEPに含まれる“Bellyache”は、ビリーが万引き、あるいは時折友達のおもちゃを盗んだことへの後悔の念から生まれた。「罪悪感を吐き出したかった。警察が教室に来て、私を親から引き離すんじゃないかと思ってた」と笑うビリー。「そんなバカなことあるわけないけど、それほど圧倒される気持ちって他にはない。子供にこういう感情(の歌詞)は書けないっていうのはウソだね。」

   

こうした曲や感情やメッセージをみんなに真剣に受け取ってもらうことは容易ではない。

  

「大人に“愛の何を知ってる?”って聞かれるけど、長らく愛を感じてないアンタより今まさに初めて愛を感じてる私の方が愛を知ってるよって思う。どっちが説得力があるかじゃなくて、大人とは絶対的に異なる感情なの。大人は愛や傷心や痛みや、死にたいって気持ちに慣れてるけど、若者にとってはその全てが初めてですごく怖いことだから。」

   

ビリーのEPは世界に向けた序章に過ぎず、翌年2018年、彼女は世界で最も話題の10代の一人となった。自身の洋服の型のデザインに加え、主張が強めのアンセム“You Should See Me In A Crown”と、情緒的な“When The Party’s Over”をシングルリリースした。

  

“When The Party’s Over”の映像は暗く不穏で、ビリーのクリエイティブなマインドを見事に解放した作品となっている。この映像で彼女はグラスに入った粘性のある黒いインクを飲み干すが、ワンカットで撮られたこの映像の終わりにそのインクが彼女の目から流れ出す。「映像にしようと決めてたから、監督みたいに全部の計画を立てた」と話すビリー。「私がスゲーやな奴になってる動画があるんだ!庭に行ってお母さんに私の役をやらせた。テーブルとグラスと椅子を持って外に行かせて、私が考えてるとおりの姿勢に座らせて、撮影しながらカメラワークや全部を決めていった。」

  

来年リリース予定のこのアルバムにもホームメイド感は健在で、“Ocean Eyes”と同じスタジオで兄フィネアスとともに録音が行われている。今やビリーの電話帳にはタイラー・ザ・クリエイターやミゲルなど、錚々たる面々が名を連ねているが、大きなスタジオに行ったり彼らに曲への参加を頼んだりすることは考えていないと言う。

  

「そうしたいって感じたことは一度もない。自分の音楽を人に送ったり、人のために(音楽的に)何かをやりたいとは全然思わない。人の意見なんか聞きたくない。」

  

“世界中をツアーしてるのは?タダで靴をもらえてるのは?私だよ。
別にうぬぼれてるわけじゃないけど、失せなクソ野郎”
-ビリー・アイリッシュ

  

12月前半の現在、4日後の締め切りまでにアルバムを完成させるため、みんなが「仕事をこなしている最中」だと言う。私はこんなときに彼女の時間を8時間も奪うことに罪悪感を感じると伝えると、ビリーは自信を覗かせた。「昨日は2曲レコーディングしたよ。アルバムを完成させなきゃって必死で頭がイカれてきてる。」ファンは気にいると思う?と聞くと、「アルバムの話をするとキャーキャー叫んでくれるし、気に入ってくれると思う!私は気に入ってる!」

  

ビリーのファンはものすごく多い。現在、インスタグラムではフォロワーが1千80万人(2019年12月時点では4千600万人)、さらにフェイスブックでも1千80万人で、そのほとんどが彼女と同年代だ。

  

この膨大なフォロワー数と人口統計から分かることだが、ビリーは地球上の他のどんなポップスターも成し得ないことを今まさにやろうとしている。彼女は10代すべての人たちにとって最も重要な人物の一人になろうとしているのだ。彼らとの繋がりを持ち、10代の声を代弁できるのは、彼女もまた一人の10代だからだろう。

Part 2に続く↓

NME元記事(英語)
https://www.nme.com/big-read-billie-eilish-interview-nme-100-2019